58.入社の夏の一時帰休

単調な毎日を過ごしつつも、夢は失わなかった。

何事も地道な努力が肝心。下積みがなければ未来はない。石の上にも三年。
いくら世間知らずの僕でも、それぐらいは分かっているつもりだ。
しかし現実は・・・会社が大変な状況だった。

製品が売れず、業績が悪化していたのだ。生産計画がどんどん落ちていった。当然、残業はない。
それどころか入社1年目の夏に、ついに2週間の「一時帰休」を言い渡された。

一時帰休?何、それ?一時解雇?新聞でしか見たことがないような言葉だ。
製品を作っても売れないので、操業を短縮するため、労働者の雇用関係はそのままで、休業してもらうってことらしい。しかし休業中の給料は減らされる。
レイオフ(一時解雇)を一時帰休という意味で使うことがあるが、正確には違う。解雇ではないから。
でも入社早々、あんましじゃない??

大学の教授の言葉が思い出された。
「君は、できあがった大企業に行くよりも、伸びつつある中堅企業の方が向いているぞ。その方が君の能力が充分に発揮できると思う」
この一言でこの会社への就職を決めたのに・・・

伸びつつある中堅企業??とんでもない。下り坂の中堅企業じゃないか!!

東洋社は当時、アメリカのアリスチャルマーズ社、マッセーファーガソン社とOEM契約を結んでおり、自社の日の本トラクターブランド以外にこの2社のブランドの製品も作っていたのだが、1台作るごとに40万の赤字が出るとかいう悪いうわさが聞こえてきた。

入社時のパートのオバチャンの一言が、次第に重くのしかかってきた。
「あんたはん、九州大学まで出られて、何でこんな会社入ったん??この会社はつぶれるでぇ~~」

確かに、悪い話しか聞こえてこなかった。
よし、僕が立て直してやろう!と心の底で思った。
幸い、社長が新入社員の声を聞きたいと、懇談会が催されるチャンスが訪れた。

東洋社の創業者・故田上龍雄社長(当時80歳、2002年101歳で逝去)は、農機業界のカリスマだった。日本初の乗用トラクターを開発した人だ。その経営理念が進歩的で当時、「農機新聞」という業界紙に「田上哲学」というコラムをシリーズで書いているほどだった。

その社長に直接会った。
農機を知ってたかだか2年ぐらいの、怖いもの知らずの若造が、農機のカリスマに単刀直入に言った。
「メーカーは製品開発が命なはずです。新製品を生み出すための研究機関を作ってください!」
具体的な返事はなかったが、老練な社長の表情が一瞬変わったのを覚えている。

本音は『工場が一時帰休を余儀なくされているようなときに、ご自分の栄光の時代に浸って、その時代にしか通用しないような哲学なんぞ語ってる暇があるんですか??』って言いたかったけど、さすがにそこまで口に出せなかった。

しかし、社長に直言したからといって、現実は変わらなかった。当然だ。業績は悪化する一方だった。
完成したトラクターを次から次に倉庫に並べていく作業が増えていった。すべて売れる予定がない在庫品だ。

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何でそげな事に?!・・・・。
今、リリースされてるラルクの曲を聴いて
「夢を描くよ~♪」な気分になって~♪

ラルクっていえば、きのうMステに出とったよ。
歌ってたの、その曲じゃなかったかな・・・

見た?見た?
そうそう~その曲よ~~♪
ブリックでも歌ったよ~(ワクワク)
「降り立った彼方で 目を開けたら・・・
笑顔のままの君に 逢えるといいな」
>笑顔のままの君
ぜったい私!!だろう~と信じて!!聴いています^^(妄想の世界よね~ほほほ!)

ぎゃはは~~!!
その妄想がないとこの世は面白うない!!
だよね??

・・・・まあ・・ね。
「君」とか「あなた」は~「私」と信じております(ポッ!!)

そ、信じるものこそ救われる[:キラキラ:]

入社1年目で、2週間の休業がキツイですね・・・
でも、社長が若手の声を聞きたいって言う場が
あるなんて、当時にしては珍しい事じゃないですか?
今の時代でも、積極的に若者の声を聞く企業を増やして
欲しいですね!!
ねつ造だの隠ぺいだの、ため息つく言葉が飛び交う世の中には
ウンザリです。。。

確かに、聞いてくれるだけでも、まずは合格だね。
単なる「ガス抜き」じゃ困るけど・・・
それから、時代が変わってきてるね。
権力者に対して、昔は大目に見ていたことも、最近は許さなくなってきた。
国の将来よりも、自分の利益しか考えない政治家が増えてきたせいか・・
信用ならんもんね~~
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