66.鉄の男たち

製鉄所には、様々な人たちが働いていた。

出身地別に言えば、新日鐵は発祥が八幡だから、九州からきた人と、東北からの出稼ぎの人、そして地元千葉の人が、それぞれ3分の1ずついるような感じだった。

「新日鐵は金太郎飴だ」と揶揄されることがある。社員のどこを切っても同じ顔が出てくる(同じ答えが返ってくる)という意味だ。

しかしこれは、経営者が中長期計画を策定し、それにそった単年度目標が設定され、その目標が職場ごとにブレークダウンされ、末端まで徹底されていく中で、TOPの方針や思想が従業員全員にしっかりと行き渡っているという証明でもある訳だから、素晴らしいことなのだ。

新日鐵は、その前身の「官営八幡製鉄」と「富士製鉄」の出身者をそれぞれ「丸系」「角系」と呼び、出身地閥、学閥などがからみ、出世競争も激しいと聞く。
しかしその競争を抜きにしても、鉄の男たちが「鉄をつくる」ことに情熱を傾けている姿は美しく、これといった目標もなくプラプラと生きてきた僕は、彼らを羨望の眼差しで見ていた。

本当に頭がよく、仕事ができる人間というのを、彼らに見た。そして、その後も知らない。現在、周りを見渡せば、哀しくなるほどだ。


一方、関連会社や協力会社には、とにかくユニークな人が多かった。ニューヨークは人種の坩堝だという表現があるが、製鉄所はさしずめ人間の坩堝だった。
鉄には超エリートが多かったが、協力会社には小学校しかでてない人や背中に刺青を背負った人や小指がない人もいた。
しかしそういう人ほど、人情味豊かで、知恵と技術があり、人を楽しませてくれる手立てを知っていて、本当にいい人生勉強をさせてもらった。


24時間眠らない現場、深夜何度でも呼び出される現場、常に命の危険に晒されている現場、そんな過酷な現場で、僕は大学出たての(といっても26歳だったが)何も知らない技術員として、親ほどの年齢の人たちを指揮・命令する立場に、突然なってしまった。

現場から上がってくる作業員は、頭のてっぺんからつま先まで、粉塵や油で真っ黒。世の中にはこんな仕事もあるのかと、心底驚いた。
否が応でも緊張し、肩に力が入った。そんな僕を、温かく受け入れてくれ、黙って従ってくれた現場の人たちに、今更ながら感謝したい。

女性といえば、管理事務所やサブセンターに数名の事務員がいるだけ。
製鉄所は、鉄づくりに命を懸けた男たちの夢と情熱と現実がぶつかり合う激しい職場だった。

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TBS系列の「華麗なる一族」で電炉が放映されて
いました。
高炉を初めて見学した時「まさに鉄は、国家なり」
と思いました。
新入社員で新日鉄の名古屋営業所に行った時
われわれと違い一段上の印象がありました。
鉄を買わさせていただく風潮が商社の中にあり
新日鉄は、偉い会社だなと思ったものでした。

彼らには日本を、いや世界を支え、リードしているというプライドがあったに違いない。
でも、それだけじゃない。ちゃんと努力し、勉強していた。とても彼らには敵わないと思ったよ。

情熱と責任感、仕事に対して誇りをもって働いている方が多い
会社にいたんですね!凄く、感銘を受けました!

彼らを見ていたら、人間って一つのことに情熱を傾けて努力すれば、何でもできるんだって思えたよ。
何か、そんなシンプルなものを、ずっと自分は求めて来たような気がするなぁ~~
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