赦し~長崎市長 本島等伝~

赦し~長崎市長 本島等伝~」を読んだ。

著者は毎日新聞の横田信行記者。本島氏を密着取材し、生まれから現在までを辿りながら、氏の人間性、思想の変遷を浮き上がらせた評伝だが、この本を通して人間とは、平和とはを深く考えさせられ、読み応えがあった。

氏は上五島のカクレキリシタンの末裔で、非嫡出子として生まれる。小さい頃から「ヤソ」「クロ」などと差別を受け、苦学をし、軍隊では「キリストと天皇のどちらが偉いか」と因縁をつけられ、つらい思いをする。

敗戦の喪失感のなか、京大に進学、学生運動に走り、神とマルクスの狭間で悩む。卒業後教職から、衆院議員の秘書に。県議に立候補し苦労して当選。以後弱者支援を考え続け、大衆政治家として経験を積み、ついに長崎市長となる。

市長就任後は原爆と平和を語らざるを得なくなる。被爆市の市長として国連で発言、海外の要人と会いながら、独自の原爆感、平和感を形成していく。その思想の変遷に影響を与えた人々のことも語られている。

本人は自分の考えは借り物だと言い切るも、そのベースに氏の差別体験、カトリックの思想、豊富な読書量、幅広い交友関係、そしてそれらを活かすことができた生来の記憶力があったことを忘れてはならない。

そして市議会での共産党議員の質問に、ごく普通に答えた「天皇の戦争責任はあると思う」というたった13文字の一言が、結果的に「菊タブー」に挑戦することとなり、ついには銃弾を左胸に受け、九死に一生を得ることとなる。

以後、ますます持論を先鋭化していく。

「被害のことばかり言っていてもダメだ。日本は加害責任を明らかにし、謝罪しない限りは、国際社会で共感を得られない」という到達した考えには、全く同感する。

つらい思いをしたからこそ、相手のつらさも分かるというもの。

被爆者が身近にいる長崎で、市長としてこういう発言ができるのは本島氏だからこそであろう。

氏は「本音をずばずば言ってしまうのが僕の悪いところさ」というが、それを言っても周りが許してくれるその人格と日頃の努力があるのを忘れてはならない。

久間元大臣が「原爆投下はしょうがない」と言って辞任に追い込まれる前から、「原爆は仕方がなかった」と発言していた本島氏を誰も糾弾しないのは何故なのであろう。

赦してきたから、赦されるのか・・・

その答えがこの本には語られているように思う。
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長崎には「墓・坂・馬鹿」が多いと揶揄されますが、「先人(歴史・文化)を敬うハカ・人の苦労(斜面都市・殉教・被爆)を知るサカ・自らを捨て人に尽くす(まつり・地域活動・平和運動)バカ」のことだと解釈し、このハカサカバカ精神で行動しながら、ケルン(記事)を積んでいます。

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